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先日、こんな相談がありました。
「数年前に土地を相続したのですが、現地を訪れたことはありません。にもかかわらず、固定資産税を払い続けている状況。このままではいけないと思っているのですが、不動産を扱った経験もないので、どうしていいかわかりません…」
驚くかもしれませんが、相続そのものは書類さえ揃っていればできます。
問題は、その後。
発生する固定資産税や不動産への対応こそが本来考えるべきこと。
先行き不透明な状況で家計に重くのしかかる固定費はネックです。とはいえ、何をすればいいのかわからず放置して、延々と税金を払い続ける方もいるのも事実。
今回は、
を中心に土地家屋調査士としての経験から解説していきます。
知識があれば、遠回りをして時間を無駄にすることを防げます。
また、知識は大事な資産を防衛する盾にも資産を築く武器にもなるため現代では必須。
不動産を相続したものの、何をすればいいのかわからない方や、今後相続をするかもしれない方は、ぜひ最後までお読みください!
まずは、不動産を確認せずに相続してしまった方の事例を紹介します。
現地を見ないとどんなデメリットがあるのかを知っているのと知っていないのとでは、その後の行動に大きな違いが出てくるので参考にしてみてください。
結論から言うと、あるはずの建物がありませんでした。
私も初めて聞いたときには、耳を疑いましたが事実です。
「公の機関が管理している中で、このようなことが実際に起こっているのか…」というのが土地家屋調査士としての正直な感想ですから、「まさかそんなことが起こるなんて思ってもみなかった」とあなたが感じたとしても不思議ではありません。
以降、私は必ず不動産を相続する予定の方には、「一度は現地に赴いて相続する予定の不動産を確認してください。忙しいからといって、書類上の手続きだけですませてしまうと払う必要のないお金を払い続けることになるかもしれません」と言うようになりました。
それでは、詳しく見ていきましょう。
数年前に相続登記だけすませた現地に訪れてみると、そこにあるはずの建物がなかったのです。
登記簿には建物があることになっているし、固定資産税だって毎年払っていたのに、です。
「どういうこと?」と不思議に思いますよね。
この方(冒頭で紹介した方とは別の方)は、複数の土地と建物を相続していました。
遊ばせておくのはもったいないから運用でもしようと思っていたとのこと。
ところが、肝心の建物がないのですから運用はできません。
計画を最初から練り直す羽目に…。
このように、現地を見ずに登記簿だけで判断してしまうと思わぬ事態になりかねません。
「自分には、こんなことは起こらないだろう」などと思わないでくださいね。
あくまで可能性の話ですが、絶対に起きないとは言い切れません。
建物の解体を行った後に「滅失登記」をしていなかったため、登記簿上ではあるはずの建物はありませんでした。
滅失登記とは簡単に言うと、「建物を解体したから、この土地にはもう建物はありません」ということを明らかにすることです。
なお、滅失登記は建物を解体してから、1ヶ月以内に行う必要があります。
滅失登記は不動産登記法で所有者に定められた義務であり、法務局が勝手にやってくれるわけではないので注意が必要です。
以下の2つの方法で滅失登記の手続きを行いましょう。
滅失登記をしなかった場合、10万円以下の過料が課せられるので注意しましょう。
建物を解体してから売却するときにも、滅失登記をしていないと、支障をきたすことがあります。
次に気になるのは、「払っていた固定資産税を取り戻せるのかどうか」ですよね。
ご安心ください。
固定資産税の還付請求はできます。ただし、5年以内。
しかし、現地に訪れて建物がないことに気がつかなければできません。
繰り返しになりますが、相続する前には必ず現地に訪れましょう。
人間がやることに絶対はありませんし、書類だけではわからないことは不動産に限った話ではありません。
なお、還付請求の際は、所在地の税務課もしくは税理士の方に相談するようにしてください。
忙しくて時間がないと思う方もいるかもしれませんが、早期に発見できれば治療できる病気があるように、現地を早めに確認することで最適な手を打ちやすくなります。
【見逃し厳禁】相続する場合の3つの選択肢【初心者向け】
不動産を相続した場合にとる方法は次の3つです。
暮らす場合は、特に問題はないので、今回は省きますね。
絶対的な正解はなく、自分の価値観やライフスタイルに合っているかどうかで選択は変わります。
売却と運用する場合の注意点などを解説するので参考にしてみてください。
まずは、売却についてのメリットと注意点を紹介します。
メリットは次の2つ。
次に注意点は以下の4つです。
これらに加えて、相談する業者の選択も重要になってきます。
選択の基準は一概に言い切れませんが、いくら手元に残るのかを説明してくれることは最低条件です。
いきなり見ず知らずの不動産屋さんなどに相談することに抵抗を感じる方は、お気軽にご相談ください。
不動産会社・ハウスメーカー・工務店・建築会社・設計事務所などの選択について、20年以上の実務経験で得た知見からアドバイスをさせていただきます。
繰り返しになりますが、現地を確認して登記簿と一致するかの確認は忘れないようにしましょう。
確認を怠ると、
などのトラブルが起こる恐れがあるため。
登記内容を一致させるための手続きにも費用がかかることも覚えておきましょう。
経費がかかるので、最終的に手元に残る金額に影響します。
大切なのは、最終的に自分がどうしたいのかを明らかにしておくことです。
焦る必要はありません。
その上で、不動産会社選びが大事。
いくつかの不動産会社に相談して、総合的に判断しましょう。
不動産を相続した方の中には、アパートやマンションを建てて家賃収入を得たいと考える方もいます。
自分が働かなくとも、家賃収入が得られるのは魅力的。
街を見渡せば、建物の数だけ家賃収入を手に入れている人がいるので、「自分にもできるのでは?」と思いそうですよね。
しかし、知識が必要なのは言うまでもありません。
ゼロから勉強するとなると時間がかかるので、資産管理会社や建築会社のお世話になることが多いのですが、ここでも注意が必要です。
不動産を運用することは、不動産経営をすることと同じだからです。
修繕費用、宣伝広告費、管理費などのコストも発生しますし、空室リスクもあります。
さらに日本は少子高齢化が進んでいるので、立地によっては、そもそも不動産経営に向かない場所もあるでしょう。
自分でも勉強をして、目利きができるようになっておかないと変化に対応できない恐れがあります。
具体的には、以下の方法がおすすめです。
不動産は株式と違い、大きなお金が動くうえに、株式のように簡単には手放せません。
「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、慎重すぎるくらいでちょうどいいのです。
相続は人生のビッグイベントです。
しかし、不動産に関する教育など受けていないので、扱いに困るもの。
扱いに困るからと言って、何もしなければ、せっかくの資産も宝の持ち腐れ。
特に、不動産が遠方なら、なおさらでしょう。
今回ご紹介した事例からもわかるように、必ずしも登記簿の内容と現地の状況が一致するわけではありません。
とは言え、遠方の不動産を相続される可能性のある方は、現地に赴くのが難しいかと思います。
ひとりで悩まずに現地の土地家屋調査士に調査の相談をしてみてはいかがでしょうか?